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市場を把握するということ①ーマーケティング部門

市場を把握することは、マーケティング部門が事業計画や販売予測、年度予算計画を立案する上で重要です。

また、現場のセールス部門でも、地域の市場や、個々の顧客の市場性や、その特性を把握することが、

現場の行動の優先順位付け、行動量の割り振り等で重要になります。

 

様々なデータが存在する今日では、データを活用して市場の大きさや特性を把握することができます。

私が専門的に行ってきたB2B市場である、医療用医薬品の市場(医師の処方により発生する市場)について

2回に分けて記します。

 

第1回は、マーケティング部門での活用です。

第2回は、セールス現場の活用についてお話しします。

地頭の訓練的なことも含まれていますので楽しみにしてください。

 

市場の把握では、スーパーやコンビニではPOSシステム(販売時点情報管理 Point of sale system)が有名ですね。

殆どの店舗で導入され、マーチャンダイジング,在庫管理,物流などに活用されています。

医療用医薬品でも、内服薬等であれば大手の調剤薬局チェーンにはPOSがあり、どの調剤薬局店舗で、どの薬剤が、どれくらい処方(調剤)されたかがリアルに把握されているようです。

 

 


スーパーやコンビニと、医療用医薬品の違いは?

スーパーやコンビニでは、購入者が購買の意思決定者であり代金を支払い、意思決定の動向がリアルに把握されます。

 

一方、医療用医薬品では購買(処方)の意思決定を行う医師と、処方箋をもらい代金を支払う患者さん、そして薬を処方する調剤薬局という複雑さ、すなわち購買(処方)する意思決定者と、もの(薬)を提供するサービス者、そして代金を支払う人が一致していません。

 

したがいまして、製薬会社としては、購買の意思決定者である医師の市場を把握すること、また医師の購買を左右する患者さんの市場を把握することが必要になります。購買の意思決定者である医師の市場は、医薬品の市場にほぼ一致します。

 

医薬品の市場は、すでに発売されている薬剤については、大手の医療系情報会社であIQVIA社(旧IMS社)が、一定の大きさに区切った、地区別薬剤別市場データを販売しており、大手製薬会社は自社の主力品市場のデータを購入しています。このデータは売上高で示されています。

マーケティング部門等で、日本全国の市場データを活用するとともに、地区別の市場データをセールス現場で活用しやすい形で提供しています。

 

マーケティング部門では、この売上データを活用して競合とのシェア把握や、地区格差の把握、マーケティング戦略作りに役立てます。

マーケティング・セールス両部門では、売上データを、患者数として算出し直します。

具体的な方法は、第2回で記載します。

 私の経験では、マーケでは2ヶ月に1回、現場では少なくとも年に2回は、該当疾病領域全体の総患者数と自社・競合分析を行っていました。

 

また、全国のデータ(マクロのデータ)として厚生労働省の各種統計データを用います。

人口動態、患者調査、受療行動調査を用いました。都道府県別や年齢階級別に出ています。

がんでは、がん登録データを活用します。

マーケティング部門では、臨床治験中・発売準備中、あるいは導入を検討する開発品の市場予測・販売予測を行うことなどに用います。

さらに、文献調査を行い、疫学データを用います。有名な久山町研究など、様々な疾患で疫学研究があり、全体の罹患率や、重症度別の罹患率が出ています。

年齢階級別の人口動態や、患者調査、疫学研究データを組み合わせて、市場を把握しようと努めます。

詳細は記しませんが、ある開発薬の市場予測・販売予測では、3つの疫学調査の文献から確からしい日本人の罹患率を年代別に導き、透析・非透析の場合に分けて予測を行なっています。

 

他のデータとしては、レセプトデータが販売され活用していました。レセプトは、医療機関が診療報酬の請求のために作成する書類で、1患者さんあたり1枚作成されます。疾患名と検査、処方薬剤などが掲載されています。もちろん匿名化され集合となったデータであり個人情報は保護されています。

どんな疾患にはどんな検査が行われているか、わかります。検査の実施間隔も見ることができます。検査値によって処方変更を考える場合に、3ヶ月に1回の検査では、処方変更機会は毎月ではなく、3ヶ月毎になる可能性が高いという予測ができます。

また患者さんの投薬継続率も見ていました。半年後や1年後に投薬が継続される患者さんは何%なのか、投薬日数は平均すると何日になるのかがわかります。

また、レセプトデータでは、診療科別の該当疾患の診療割合や、投薬割合、また合併症の合併率もわかります。

一般内科を標榜していますと、患者さんの50%に高血圧が、30%に高脂血症が、25%に糖尿病、30%に睡眠障害を罹患していることがわかります。循環器内科では、糖尿病は2040%、高脂血症は3060%。糖尿病内科ではインスリン使用率が50%以上。腎障害を疑うクレアチニンの検査は10%に実施などが把握できます。

 

また、マーケットリサーチ会社と協力して、上記のデータからは把握できないことや、医師のニーズを探るため、定期的なマーケットリサーチを実施しています。マーケットリサーチには適切な仮説を持ち実施することが肝要と考えています。

カスタマージャーニーやバイングプロセスを明確にあらわしたり、プロセスで医師の意思決定に重要となるところを深掘りします。製品の普及プロセスであるキャズムを越えるためのリサーチも行います。さらに潜在市場を導き出すためのリサーチも行なっています。

 

マーケティング部門では、様々な既存データの活用、マーケットリサーチ、そして直接影響力のある医師へのヒアリングなどを通じて、マーケティング戦略と具体的なアクションプランを作ります。そしてセールス部門にわかりやすく伝え、セールス部門の納得を得て連携し、市場への早期浸透を図っていきます。

 

しかしながら、マーケティング部門のデータはあくまでもマクロ(マス)のデータであり、セールス現場では、エリアの市場、そして個々のクリニックや病院の医師毎の市場と特性を把握して具体的な活動を行うことが必須です。第2回では、セールス現場での市場把握についてお話しします。

 

Kiku塾では、カスタマージャーニーやバイングプロセスを踏まえた市場把握の実際についてのワークショップを開催しています。2019年度の開催日はあらためてお知らせします。

 

 

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